
ふと立ち寄ったカフェの限定メニュー、お気に入りのブランドとコラボしたTシャツ、そして街中で見かけるポップアップストアの長い行列。私たちの日常は、気づけばたくさんの「キャラクター」で彩られています。子どもの頃に夢中になったあのキャラクターも、今まさに心を掴んで離さない「推し」のあの子も、実はただ「かわいい」だけではない、とてつもないパワーを秘めていることをご存知でしたか?
今回は、そんなキャラクターたちが動かす、ちょっぴり意外で壮大な「キャラクター経済」の世界へご案内します。読み終わる頃には、いつものグッズが少し違って見えるかもしれません。
キャラクターがビジネスを生み出す魔法の仕組み
「キャラクタービジネス」と聞くと、ぬいぐるみを売ったり、文房具になったりする「グッズ販売」を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれも大切ですが、実はもっと奥深い世界が広がっています。
このビジネスの心臓部にあるのが「知的財産(IP)」という考え方。少し難しく聞こえますが、要は「そのキャラクターのデザインや物語は、生み出した人の大切な財産ですよ」という法的なお守りのようなもの。このお守りがあるからこそ、企業は安心してキャラクターを育て、様々なビジネスに展開できるのです。
その代表的な手法が、他の会社にキャラクターを使う権利を貸し出す「ライセンスビジネス」や、人気キャラクターと自社ブランドを組み合わせる「コラボレーション」。私たちがコンビニで思わず手に取ってしまうキャラクターパッケージのお菓子や、コスメブランドとの限定コラボポーチは、この仕組みから生まれています。キャラクター側は新しいファンに出会え、コラボ相手の企業はキャラクターの力で売上を伸ばせる、まさにWin-Winの関係なのです。
実は日本が世界最強?キャラクターが持つ驚きの経済力
では、このキャラクター経済、一体どれくらいの規模なのでしょうか。矢野経済研究所の調査によると、なんと2023年度の日本国内の市場規模だけで、約2兆7,000億円にものぼります。これはもう、立派な一大産業ですよね。
さらに驚くべきは、世界での日本のキャラクターたちの活躍ぶり。メディアフランチャイズ(キャラクターなどのシリーズ全体)が生涯で稼ぎ出した総収益ランキングでは、あの世界的なミッキーマウスやスター・ウォーズを抑えて、1位に「ポケットモンスター」、2位に「ハローキティ」が輝いているのです。トップ10には「アンパンマン」や「マリオ」もランクインしており、日本の生み出すキャラクターがいかに世界中の人々から愛され、莫大な経済的価値を生み出しているかがわかります。
なぜ、私たちは「ちいかわ」にこれほど惹きつけられるのか
近年、この巨大市場の新たな主役となっているのが、SNSから生まれたキャラクターたちです。その筆頭が、今や社会現象ともいえる「ちいかわ」。
「ちいかわ」の魅力は、ただかわいいだけではありません。不条理で、時に少しだけダークな世界で、懸命に生きるキャラクターたちの姿に、現代社会のストレスや不安を抱える私たちが強く「共感」し、応援したくなる。この感情的な結びつきこそが、熱狂的なファンを生み出す源泉となっています。
その経済効果は絶大です。ある回転寿司チェーンとのコラボでは、売上が前月比で20%以上も増加。百貨店の期間限定ショップには、通常の2倍以上の人が訪れました。この「ちいかわエフェクト」は、ファンがキャラクターの世界に参加し、体験を共有したいという強い想いから生まれているのです。
「モノ」から「コト」へ。私たちが本当に欲しいもの
こうした現象は、キャラクタービジネスのトレンドが、商品を所有する「モノ消費」から、特別な体験を重視する「コト消費」へとシフトしていることを象徴しています。
キャラクターの世界観に浸れるテーマカフェ、作品の裏側を覗ける展示会、そしてアニメの舞台となった場所を実際に訪れる「聖地巡礼」。大ヒット映画『君の名は。』の舞台となった岐阜県では、聖地巡礼による経済効果がなんと250億円以上に達したという試算もあります。
ファンは、ただグッズが欲しいのではありません。そのキャラクターがいる世界に触れ、物語の一部になるという「体験」にこそ価値を感じ、心を動かされているのです。
これからも、私たちのそばに
キャラクタービジネスの世界、いかがでしたか?
私たちがキャラクターに惹かれ、応援するその気持ちは、単なる消費活動ではなく、作り手とファンが一緒になって物語を育てていく「参加」の証なのかもしれません。その「好き」という純粋なエネルギーが、巡り巡って巨大な経済を動かし、新たな感動を生み出す原動力となっています。
デジタル技術の進化で、これから先、キャラクターと私たちの関わり方はもっと深く、もっと楽しくなっていくはず。あなたの「推し」が、次はどんなワクワクする体験を届けてくれるのか、楽しみにしたいですね。
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